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新しい薬は基礎の研究がなされた1000個から1500個の化合物の中から1つの割合で、初めて人に対する試験ができるようになります。その後、患者さんの病気に対して、安全で、効果的であるかを5年から10年かけてじっくり調べ、薬の効き目が科学的に証明され、かつ、患者さんの生活の質を損なわないと判定されて初めて、厚生労働省から医薬品として認可を受けることができます。
患者さんの病気に対して、新薬の安全性や効果を確認し、厚生労働省に医薬品として認めてもらうための試験を製薬会社や医師が行うことを治験といい、このとき使用される薬を治験薬といいます。また、治験に参加される患者さんのことを被験者と呼びます。 

治験は第Ⅰ相試験(臨床薬理試験)第Ⅱ相試験(探索的試験)第Ⅲ相試験(検証的試験)の第3段階の試験で成り立っています。


●第Ⅰ相試験(臨床薬理試験)
治験薬を初めて人に投与する段階です。今までの研究や動物での試験から得られたデータをもとに健康な志願者に対して使用し、予期しない薬の効果や有害反応が現れないかどうか、治験薬が体の中でどのように吸収され、広がり、分解され、体から出てゆくのか、治験薬の分量はどれぐらいが適当かなどを確認します。
また、例外として、抗悪性腫瘍薬のように毒性が高く、被験者に有害反応が出る恐れのある薬物では健康な志願者ではなく、患者さんを対象に実施されることもあります。


●第Ⅱ相試験(探索的試験)
第Ⅰ相試験から得られた情報をもとにして治験薬の効果が予測される患者さんを対象にして実施されます。まず、安全性と有効性を確認したうえで、患者さんに対する有効な治験薬の用法や用量を血液の中の治験薬の量から推測します。


●第Ⅲ相試験(検証的試験)
第Ⅱ相試験までに得られた情報から、最も効果があると考えられるより多くの患者さんを対象に有効性と安全性を検証する試験です。また、長期間治験薬を服用しても副作用などの問題がないかどうかも確認します。


これらの試験を経て、厚生労働省が医薬品として承認し、製造販売されるようになると、今までよりたくさんの患者さんに使用されることになります。製造販売された後も、今までの試験では得られなかった副作用の情報や高齢者や小児、妊婦、胎児に対する安全性や有効性等を確認するために、第Ⅳ相試験として使用成績調査、特定使用成績調査、副作用調査などが実施される場合もあります。

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患者さんが安心に治験を受けていただくために、また、治験を担当する医師の業務の負担を少しでも減らせるようにサポートする係が必要になります。これがCRC(Clinical Research Coordinator-臨床研究コーディネータ)です。CRCは患者さんに治験の説明の補助を行い、被験者が治験薬をきちんと飲めているか、副作用は出ていないか、治験を続けることに不安はないか等を確認します。また、治験スケジュールを管理や、担当医師や治験依頼者等との間に入り仕事の調整とサポートを行います。


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患者さんが治験に参加するかどうかを決めていただくために、治験についての十分な説明をしたうえで、ご同意いただくことをインフォームドコンセント(Informed Consent, IC)といいます。担当医師は患者さんが受けることになる治験について、あらゆる角度からの説明を十分に行い、患者さんがこれを理解し、自由な意思によって治験への参加に同意し、書面によって確認することが治験では義務付けられています。また、説明しなければならない項目も義務付けられています。担当医師の診察時間内では、十分説明する時間が取れないので、CRCがお時間をいただき、患者さんにご理解いただけるように説明を補助したうえで、治験に参加するかどうかを決めていただきます。患者さんには説明したその場で同意していただくのではなく、一度説明文書を持ち帰っていただき、ご家族や周りの方の意見も聞いてからご同意をいただく時間を設けています。また、ご同意の時は必ず同意書にご本人の署名をしていただきます。もしも、ご本人が署名できない場合は代諾者の方の署名が必要です。ご同意いただいた後でも、自由に同意を撤回することもできます。


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治験にご同意いただくと、試験の誤差を少なくするために、まず、患者さんの体の状態、病気の重症度などの条件がこの試験に適しているかどうかを確認する検査や聞き取り調査を行います。これをスクリーニング検査といいます。この検査の内容は治験によって異なりますが、主に、身長、体重、体温、血圧、採血、呼吸器検査、心電図、CTスキャン、問診などがあります。この試験で、患者さんの状態が治験に参加できる条件に入らなかった場合は、患者さんが治験をご希望されている場合でも、治験にご参加できません。


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スクリーニング試験で患者さんの条件が試験に合うと判断されると、治験薬を使用する前の患者さんの体の状態を確認させていただく場合があります。これを観察期間といいます。この期間の間に患者さんの条件が合わないことがわかった場合、治験にご参加できないことがあります。


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治験薬の効果を正しく判定するために、治験薬と外観の区別がつかないけれども何の効き目もない薬を使用する場合があります。この薬のことをプラセボ(偽薬)といいます。薬を飲んでいると思っているだけで効果があらわれたり、副作用があらわれたりする場合があるため、プラセボを使っている人と比較することで、より明確に治験薬の効き目を確認することができます。


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1)無作為化比較試験
被験者を、プラセボを使用するグループと治験薬を使用するグループ、治験薬の投与量が違うグループ、治験薬を使用するグループとよく似た効果のあるすでに市販されている薬を使用するグループなどに分けて比較します。グループ分けは担当の医師や周りの人が決めるのではかたよりが出てしまう場合があるので、治験を行っている製薬会社がコンピューターでかたよりがないように割り振ります。この方法を無作為化比較試験といいます。


2)二重盲検試験
新しい薬の効果を担当医師や被験者などが期待すると、どうしても先入観が入り、正しい薬の評価ができなくなる場合があるので、担当医師、被験者ともに治験薬であるのか、プラセボであるのかが判断できないように試験を行うことを二重盲検試験といいます。通常これらの2つの方法を組み合わせた二重盲検無作為化比較試験で治験が実施される場合が多いようです。


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1)ヘルシンキ宣言
「治験」というと人体実験をイメージされる方も多いと思います。実際、過去を振り返ると、海外においても、また、日本においても人体実験の暗い歴史は数多く記録されています。しかし、人間に使用する医薬品の開発にはやはり人間に使用することによって初めてその効果を検証することができます。そこで、人体実験を行うにあたってのルールとして1948年に「ジュネーブ宣言」、現在は2013年に改訂された「ヘルシンキ宣言」が公布されました。その後「ヘルシンキ宣言」は何度か改訂され、現在は2008年に改訂された「ヘルシンキ宣言」に基づいて実施されています。この中で強調されていることは、人体実験を行うにあたってのインフォームド・コンセント(説明と同意)です。ここでは、研究にご参加していただくためには、医師は研究について十分にご説明したうえで、患者さんに納得していただき、ご同意をいただくこと。また、患者さんはいつでも研究への参加をとりやめることができることなどが宣言されています。

「ジュネーブ宣言」全文(日本医師会ホームページ)についてはこちら・・・
          http://www.med.or.jp/wma/geneva.html
「ヘルシンキ宣言」全文(日本医師会訳)についてはこちら・・・
          http://www.med.or.jp/wma/helsinki.html


2)GCP(Good Clinical Practice-医薬品の臨床試験の実施の基準)
薬事法に基づく医薬品の製造(輸入)承認申請の際に提出なければならないデータの集め方のルールで「ヘルシンキ宣言」の精神が尊重されています。平成元年に単なる基準として編成されましたが(いわゆる旧GCP)、少しあいまいな点があったため、平成9年に新GCPとして法制化し施行されています。日本におけるGCPは4本の柱から構成されており、1)治験を依頼する者(たとえば製薬会社)と治験を実施する医療機関(たとえば病院)間での治験実施に関する契約について 2)治験を実施する医療機関には治験審査委員会を設置しなければならないこと 3)被験者の人権の保護の徹底 4)GCPをきちんと守って治験を行うことに関する記録の保管をすることです。最近では、国際的にも通用するように少しずつ改訂されています。このルールを守って治験を実施しているかどうかを製薬会社や国の規制当局(日本の場合は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA))が医療機関を調査することもあります。


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治験を医療施設で実施するためには、その施設での審査委員会を通らなければなりません。この委員会を治験審査委員会(IRB)といいます。IRBはInstitutional Review Board(臨床試験審査委員会)の略です。当院では「受託研究審査委員会」という名前で毎月1回定期的に行っています。IRBでは、審査を行うために十分な人員が確保され、かつ、倫理的、科学的、医学的、薬学的観点から審議及び評価することができるように、医学、歯学または薬学に関する専門知識を持っている委員の他に、少なくとも1人の医学、歯学または薬学の専門家以外の委員、少なくとも1人の治験実施施設とは利害関係のない委員が参加していることとなっています。さらに、構成委員は男女両性で構成されることが望ましいとされています。


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治験にご参加していただいている間の医療費は初診料、指導料、治験薬と治験薬と同じ効き目を持つ医薬品以外の医薬品、治験を受けている診療科以外の診療科での費用等のみが患者さんの負担となり、その他の治験で必要な血液検査、心電図、X線、CT画像、治験薬などは治験依頼者(通常は製薬会社)がお支払することになります。

1)保険外併用療養費
治験薬投与日から終了日までの検査・画像診断は治験依頼者が負担しますが、治験以外の目的で実施された検査・画像診断は保険請求となります。また、医薬品のうち、治験薬と同じ効き目を持つ医薬品は治験依頼者が負担しますが、それ以外は保険請求となります。治験によって、治験薬投薬前の検査・画像診断を治験依頼者が負担する場合もあります。

2)被験者負担軽減費
治験にご参加していただくと、詳しく検査や調査をさせていただくため、通常診療時の来院回数よりも多く、診療時間も長くなってしまい、交通費も余分にかかることが予測されます。当院の場合は、患者さんの負担を少しでも減らすために、治験の来院ごとに1回について「被験者負担軽減費」として原則7000円を、月ごとにまとめてご本人の口座にお振込みさせていただいております。ただし、治験によって、金額が変わる場合があります。


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治験薬を飲んでいるか、飲んでいないかの有無にかかわらず、治験に参加している間に生じた好ましくない事を健康被害といいます。このうち、治験とは関係ないことについては、賠償責任も補償責任もなく通常の保険診療で対応することとなりますが、治験と関係があれば、治験依頼者側に過失がない場合でも補償の対象となります。ただし、被験者が担当医師に事実と違ったことを報告していたり、担当医師の指示に従わなかったり、決められた用法・用量を守らなかったりなど、その健康被害が被験者の故意または重大な過失によって生じた場合、補償が減額されたり、受けられなかったりする場合もあるので、ご注意ください。治験の説明の際には補償について説明している箇所があるので、必ずご確認いただきますようお願いいたします。


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