アルツハイマー病四方山話 第二部このページを印刷する - アルツハイマー病四方山話 第二部

神経内科医長  重松一生

  1. 第1話

第1話

春ですね。鶯のさえずりが新緑薫るそよ風を行き交っています。信州育ちの僕は春が大好きです。

さて、アルツハイマー病のお話しの続きを始めましょう。

久しぶりですが、素晴らしいお知らせがあります。ランセットという世界的に有名な医学専門誌で発表された研究の成果です。アルツハイマー病の原因として老人斑(アミロイド)が考えられていることは四方山話の第1話で紹介しました。病気の脳を顕微鏡で調べると銀で黒く染まる<シミ>が無数に認められます。このシミは、例えれば、洗濯で落ちにくい汚れみたいに水になかなか溶けません。それでなかなか正体が分からなかったのですけれど、多くの研究なされ、それがアミロイド(Aβ)と呼ばれるタンパク質であることが突き止められました。このアミロイドが脳の細胞を障害して病気を起こすのだろうと考えられています(仮説)。そうであれば、そして、もしアミロイドを取り除くことが出来れば、病気を治したり、あるいは病気の進行を食い止めることができますよね。この取り除く方法として考えられたのが<ワクチン>です。ワクチンは新型インフルエンザでも話題になりました。インフルエンザのワクチンであれば、ウイルスに対する抗体を作ってそのウイルスをやっつけ、病気を予防したり軽くて済むようにします。この仕組みをアルツハイマー病に応用してみました。アミロイドに対する抗体を作ってアルツハイマー病の患者さんに注射してみたのです。治験は、フィンランドと英国で行われました。結果は、抗体を投与して78週間後、本当に患者さんの脳に貯まっていたアミロイドが減ったのです。この抗体の名前はbapineuzumabです。ニックネームはバッピィ(bapi)。

 このバッピィが脳に入ってアルツハイマー病のシミつまりアミロイドを掃除します。

昔ミクロ決死隊というアニメがありました。うんと小さくなって体の中に入り込み病気を倒すのでしたよね。脳の中って実はとても頑丈に守られていて簡単には忍び込めないようになっています。バッピィはとても小さいのですけれどそれでもタンパク質なのでミクロの世界では結構大きいのです。それが脳の中にちゃんと入り込めたことが凄い、そしてちゃんとシミを掃除出来たことがさらに凄い、そんな成果が発表されたのです。病気を治療する、あるいは予防することが出来るのではないかと期待が膨らんでいます。現在日本を含めて世界各国で研究が続けられています。バッピィ君頑張れ!

次回はワクチン療法の夢をもう少しご紹介しましょう。

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