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呼吸器科

無呼吸は10秒以上の息が止まる状態、低呼吸は息の大きさがおよそ半分以下になると状態を指します。1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計である無呼吸低呼吸指数(AHI)が5回を超える場合に睡眠呼吸障害(SDB)ありと判定されます。SASは、このSDBに昼間の眠気などの種々の自覚症状を伴う疾患の総称です。成人男性の4%、女性の2%にみとめられる比較的有病率の高い症候群です。

実際の診療現場では、上気道の閉塞で生じる閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)がSAS症例の大半を占めています。

閉塞型無呼吸は、睡眠中にのどの筋肉がゆるんで舌がおちこみ気道(空気の通り道)が塞がれることにより生じます。そのため激しい鼾を特徴とします。肥満が最も大きな原因ですが、日本人の場合は約3割の患者が太っていません。東洋人(モンゴロイド)は、顔の形がのっぺりと前後に短く、下あごも小さく、その結果、口の中の容積が小さくなるため、わずかな小太りでSASになってしまいます。

OSASの特徴には、(1)睡眠中の繰り返すのどの閉塞、(2)無呼吸中のむだな大きな呼吸努力(とても疲れるはずです)、(3)無呼吸中の酸素の低下(全身が酸素不足になります)、(4)無呼吸後に呼吸が再開する時の覚醒反応(自覚はないのですが脳は数秒間めざめています)、(5)覚醒反応に伴う血圧の上昇(昼間の血圧が150/90くらいの方なら一時的に250/150くらいに上昇)などがあります。OSASの最重症例では、就寝時から起床時までほとんど間断なく無呼吸を生じ、60秒以上続く無呼吸といびきを伴う3~4回の大きな呼吸をくりかえします。無呼吸中、胸部と腹部の動きは逆になっており、酸素飽和度は50%前後まで低下することもあり、深い睡眠がほとんどなくなっています。こうした睡眠を放置すれば、最終的に、血管が傷つき、動脈硬化が進行し、高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳血管障害を生じやすくなります。また、インスリンが効きにくい体になり糖尿病になりやすくなります。

臨床症状

鼾(無呼吸と数回の鼾の繰り返し)、日中の眠気、熟眠感の欠如、起床時の頭痛、窒息感を伴う夜間覚醒、夜間頻尿、インポテンス、性格の変化、うつ状態、むくみ(心不全を合併した場合)などの症状があり、肥満の中年男性であればOSASの可能性が高くなります。

検査の順序

図1:外来でOSASのスクリーニングに用いるパルスオキシメーター図1:外来でOSASのスクリーニングに用いるパルスオキシメーター

外来の初診時に上記のOSASを疑わせる症状があれば、酸素飽和度を連続的に記録できるパルスオキシメータを貸し出して夜間モニター検査を2~3日行います(図1)。

酸素飽和度が3%~4%低下する回数を計算し、一時間に5~20回以上あれば入院してポリソムノグラフィーという睡眠状態(脳波・眼電図などの測定)や呼吸状態(気流・胸腹部の動き等の測定)を調べる検査を行います(図2)。重症のOSAS症例と健常者のポリソムノグラフィー検査結果の比較を図3に紹介します。

図2:ポリソムノグラフィー(PSG)

PSGはSASの確定診断に必要です。脳波、筋電図、眼球の動き等を測定することで、睡眠の深さ(睡眠段階)、睡眠の分断化や覚醒反応の有無、睡眠の構造、睡眠効率などが算出できます。

図2:ポリソムノグラフィー(PSG)

図3:OSASの最重症例

OSASの最重症例では、1時間に54回無呼吸があり、就寝から起床までほとんど間断なく無呼吸を繰り返しています。健常者では、 1時間の無呼吸は2回にとどまり、ほぼ正常の呼吸が終夜保たれています。

最重症OSAS症例
図3:最重症OSAS症例の検査結果

健常者
図3-2:健常者の検査結果

重症度判定

重症度は一般にAHIにより分類されます。5≦AHI<15を軽症、15≦AHI<30を中等症、AHI≧30を重症とします。

治療

図4:CPAP装置図4:

現在のところ有効性と安全性で最もすぐれた方法はCPAP(経鼻的持続陽圧呼吸法)です。鼻マスクなどを装着し上気道に空気を送りこんで圧力でのどを広げる治療法です(図4、5)。CPAPがうまくいくと睡眠中の血圧も安定します。軽症例では歯科的治療として特殊なマウスピースを用いることもあります。また、肥満がなく明らかな扁桃肥大などでのどが狭くなっている場合には、手術をする場合もあります。その他、肥満例では減量、アルコール・睡眠薬の制限などの生活習慣の改善指導も同時に行いますが、実際には、ほとんどの患者さんが生活習慣を変更できないのが実情です。

図5:CPAPにより上気道が開く様子図5:健常者、OSAS患者さん、CPAP装着したOSAS患者さん.a:健常者で吸気時に上気道が開存している様子.b:OSAS患者さんで吸気時に上気道が閉塞する様子。 c:CPAPにより上気道が開く様子.

坪井 知正

 

京都大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会専門医

平成11年から南京都病院に勤務しています。平成20年4月から2年間あまりは、京都大学医学部附属病院で、肝移植・肺移植後の急性期呼吸管理や呼吸器疾患・神経筋疾患を中心とした慢性呼吸不全に対する在宅人工呼吸の導入、および、睡眠時無呼吸症候群の診断と治療、を目的とした新しい講座の立ち上げに准教授として参画しました。

COPDや肺結核後遺症といった慢性呼吸不全における呼吸リハビリテーション・在宅酸素療法・マスクを用いた非侵襲的人工呼吸を専門とし、また、睡眠時無呼吸症候群における診断と治療に関しても多くの臨床経験があります。

呼吸療法認定士資格取得のための講習会や医療従事者を対象とした講演会、地域住民の方の健康講座など、多くの場面で講師を務めさせていただいています。

角 謙介

 

京都大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会専門医

平成18年4月から南京都病院に勤務。

睡眠時無呼吸症候群、呼吸不全を始めとした呼吸器疾患の診療を担当しています。

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