小児の結核このページを印刷する - 小児の結核

子供に対する結核接触者感染について(当院が作成したパンフレットより)

今回、ご家族またはお知り合いの方に結核を発症された方がいらっしゃった為、お子さんに接触者検診を受けていただくことになりました。

いろいろとご心配のことと思いますが、この冊子により、結核に関する基礎的知識や接触者検診の目的や方法、さらにその結果に対する対処法などについてご理解いただき、重要な検診や処置を適切な時期に受けていただきたいと思います。

結核とは

最近、各種メディアで報道されているとおり、結核患者数は僅かずつながら増加しており、平成11年には当時の厚生省から結核緊急事態宣言も出されました。結核は決して過去の病気ではなく、現在も注意が必要な重要な感染症の一つです。

それでは、結核とはどのような病気なのでしょうか?

結核は結核菌によって起きます。結核菌が結核患者の咳やくしゃみによって空気中に飛び、人の肺に吸い込まれることによって感染します。結核菌が肺の中に入って増殖しだすと、体の免疫機能が活動を始め、多くの場合、結核菌を閉じ込めてしまいます。そして閉じ込められた菌は肺の中で眠ったまま、その人と一生を共にします(結核菌に対して免疫を持った人=既感染者と呼びます)。しかし結核菌を吸い込んだときに、免疫機能が弱くなっている人では結核菌が活発に増殖し発病してしまいます(=一次結核・初感染結核;子どもに多いタイプ)。また一旦閉じ込めて眠っていた菌も、体力が弱って免疫力が低下してしまうと再び活動を始めて、発病することがあります(=二次結核;成人の多いタイプ)。

結核患者との接触・感染・発病

結核患者との接触があれば必ず結核という病気を発症(発病)するわけではありません。

前の項で説明した通り、結核患者(特に痰の中に結核菌が検出される患者)から飛び出した結核菌を吸い込むことで感染します。

さらに、結核菌を吸い込んだ時の抵抗力の状態によっては、菌を閉じ込めることができず活発に増殖を始め発病に至ることがあります。

即ち、感染するか?しないか?は、接触のあった結核患者の排菌状況(痰の中に含まれる菌の量や咳・痰などの症状があった期間)や患者との接触の程度(患者との同居の有無や接触の頻度)などに、また発症するか?しないか?は個人の免疫状態≒抵抗力(年齢や免疫力が低下する基礎疾患、栄養状態など)に大きな影響を受けます。

接触者検診では、接触のあった結核患者の状態(痰の中にどの程度菌が排出されていたのか?症状のあった期間は?)、患者との接触の程度、対象となったお子さんの年齢やBCG接種歴、さらにツベルクリン反応の結果などから結核に感染した可能性を判断し、さらに感染した可能性が高い場合には結核発症の有無を画像検査などよって慎重に判断します。

小児結核の発症の仕方

小児における結核はそのほとんどが初感染ののち発症に至る“一次結核症”と呼ばれるものです。

周囲の結核患者から飛び出した結核菌を吸い込むと、肺の中に小さな結核の病巣ができます。

病巣では白血球(リンパ球や貪食細胞)が動員され、菌を閉じ込めてしまう戦争が始まります。

ほとんどのケースではこの戦争の結果、結核菌を閉じ込めて眠らせてしまうのですが、ごくまれに体内にたくさんの菌が入り込んだ場合や子どもの抵抗力が弱い場合(特に生後間もない乳幼児やBCG接種を受けていない小児など)には菌を閉じ込めることができず、菌が活発に増殖して肺の病巣が大きくなったり、肺の入り口(肺門部)のリンパ節が腫れてきます。さらに進むとリンパ節で増えた菌がリンパ液・血液の流れに乗って、全身にばらまかれていきます(“粟粒結核” と呼び、しばしば結核性髄膜炎へと進展します)。

小児結核では、成人に比べて病状の進展が早く、患者と接触し感染した後、わずか2~3ヶ月で発症に至ります。また、結核は子どもにおいても症状に乏しく、感染後間もない時期に一時的に発熱が見られることがありますが、その後はかなり病状が進行しない限り、咳・痰などの呼吸器症状や発熱・不機嫌・食欲低下などの全身症状は出現しません。

だからこそ、感染の可能性が強く疑われる接触者検診例では、早期に対応すること(=後の項で説明するような化学予防の実施や発症のチェック)が必要になります。

結核者検診の実際

接触者検診は、結核患者との接触があった方を対象として、①患者との接触により結核菌に感染していないか?また②結核菌に感染したと考えられるケースについては発症に至っていないか?を判定することを目的に実施されます。

同居する御家族など濃厚な接触のあった方から同心円状にその対象を拡げて実施します。

検診の内容は、①問診:感染源となった結核患者の状況(排菌の程度や症状のあった期間)や接触の程度(患者との続柄や同居の有無など)、BCG接種歴や過去のツベルクリン反応の結果など、②診察、③検査:ツベルクリン反応や胸部レントゲン写真、必要に応じて血液検査、などです。

問診によって感染成立の危険性を評価し、ツベルクリン反応で結核菌に対する免疫の有無を判定します。(但し、日本では乳児期にBCG接種が実施されており、ツベルクリン反応陽性が即ち結核感染を意味するものではありません。)また、診察やレントゲン写真によって発症の有無をチェックします。

検診の実施時期は成人では感染源との接触がわかってから約2ヶ月後に実施されることが一般的です。それに対して小児では、前の項で説明した通り感染後比較的早期(2~3ヶ月)に発症に至るため感染源が判明した直後にまず1回目を、さらに約2~3ヶ月後に2回目の検診を実施する二段構えの体制が勧められています。

科学予防(予防内服)とは

接触者検診の結果、結核感染が判明した場合、またはその可能性が高い、と判断された場合は、抗結核剤(一般的にはイソニアチドという薬)を約6ヶ月間服用し、結核の発症を予防する治療が行われます。これを化学予防または予防内服と呼びます。

化学予防は過去の調査研究でその発症予防効果が確認されており、確実に服用を続けていた例では90%以上の例で発症を阻止することができた、とされています。小児(特に乳幼児やBCGを接種していない場合)においてはツベルクリン反応が強い陽性を認めた例はもちろんですが、1回目の検診(患者との接触が判明した直後)でのツベルクリン反応が陰性であっても結核患者と濃厚な接触があって感染の可能性が強く疑われる例に対しても化学予防を実施し、慎重な経過観察を行います。

これは感染した後、ツベルクリン反応が陽性となるまでに3~8週間を要することや、

  1. 一旦感染し、適切な予防的治療がされないと早期に発病する確率が高い、また
  2. 発病後は血液・リンパ液の流れに乗って全身に病気が拡がりやすい、

などの小児結核の特徴を考慮した上での判断です。化学予防が必要であると判断され内服を開始した場合は、予定された期間、忘れずにしっかりと薬の服用を続けること、また、発症していないことの確認や薬の副作用チェックのために定期的に診察を受けることが大切です。

感染のみで発症には至っていないこの段階では、日常生活は全く制限を受けることはありません。もちろん、周囲へ新たな感染源となる心配もありません。

以上、子どもを対象とした結核接触者検診及び化学予防についてご説明致しました。ご不明の点につきましては地域の保健所または国立病院機構南京都病院・小児科までお気軽にお尋ねください。

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