呼吸リハビリテーション-4
はじめに
一般的に健常者の場合、呼吸運動に必要とするエネルギーは1日150kcal程度とされています。
しかし、呼吸器疾患で呼吸数が2倍になると必要エネルギーは4倍(600kcal)、3倍になると10倍(1500kcal)に達する場合もあると言われています。
栄養療法:適切な食生活と食習慣の必要性は
慢性閉塞性肺疾患の患者さんでは、病気が進行すると体重の減少が見られます。栄養療法を行うと、寿命が長くなるといわれており、在宅酸素療法や薬物療法と同じくらい、慢性閉塞性肺疾患の悪化を防ぐために大切です。
なぜ体重減少が起こるのか?
慢性閉塞性肺疾患の患者さんはなぜ体重減少が起こるのか?はさまざまな原因があります。主な原因は
- 使用するエネルギーが増える:エネルギー代謝の亢進
慢性閉塞性肺疾患の患者さんでは、呼吸が荒くなり、呼吸運動によって消費するエネルギーが増えてしまいます。結果、エネルギーを使わない安静にしている時でも、健康な人よりエネルギーを多く使い、体重が減少します。 - 食べる量が減る:摂取エネルギーの低下
食べ物を噛んだり、飲み込む際に呼吸が乱れたり、食事によりお腹が大きくなると呼吸が苦しくなります。どうしても食べる量が減少します。結果、体重が減ってしまいます。 - その他の原因
気分が落ち込み、食欲が低下して、痩せてしまうこともあります。その他、メカニズムが解明されていませんが、体重を減らす血液成分の1つTNF-αという物質が増加していたり、体重を増やす脂肪組織から分泌されるレプチンという物質が減少していることが知られています。
COPD~十分な栄養をとりましょう~
COPDの方は代謝が亢進しているので、体のエネルギー源として1日に2000~2400kcalが必要です。(体重60kgの人で安静時エネルギー量が1600kcalの場合、その1.5倍の2400kcalが目標となります。)
2400kcalの献立例を下記に表わします。
下記の献立は平成22年に実施しました当院普通食(夕食:クリスマスメニュー)です。
- ◎朝食
- ○ご飯200g
- ○味噌汁(豆腐・白菜)
- ○浸し(ほうれん草)
- ○細切昆布佃煮
- ○胡瓜糠漬
- ○牛乳200ml
- ◎昼食
- ○ご飯200g
- ○ぶり大根(ぶり70g一切れ)
- ○茄子の味噌炒
- ○お浸し(小松菜)
- ◎夕食
- ○ご飯200g
- ○鶏の照焼(鶏もも60g)
- ○クラムチャウダー
- ○ポテトサラダ
- ○ショートケーキ
※ショートケーキは通常サイズではなく、通常のハーフサイズ程度のものを提供しましたが、このように食事+αでデザートを取り入れたり、マヨネーズ(脂質)を使用した料理を取り入れることで、摂取のカロリーを上手にアップさせることができます。
エネルギーを効率よくとる工夫
○調理に油をうまくとり入れる。
油は9kcal/gと糖質(4kcal/g)たんぱく質(4kcal/g)に比べてエネルギー量が高い食品です。毎日の献立に炒め物や揚げ物の料理を取り入れるなど、油を上手に利用しましょう。
- 粉ふき芋(40kcal)→ポテトフライ(135kcal)
- (じゃが芋:50g)
- ご飯(180kcal)→ピラフ(具材含む)(310kcal)
- (ご飯:112g)
○たんぱく質の摂取を心がけましょう。
たんぱく質とは肉、魚、卵、豆腐、牛乳、乳製品等のことで、筋肉や体組成(血液、臓器、髪、皮膚)の素となるものです。たんぱく質の摂取が不足すると筋力が低下するため、呼吸筋の低下にもつながります。呼吸筋の低下が起こると、呼吸苦を助長してしまう危険性もあるので、筋力の低下を防ぐためにもたんぱく質の摂取を心がけましょう。
○量をたくさん食べられない場合は、栄養補助食品を利用する方法もあります。
栄養補助食品については当院の医師・栄養士にご相談下さい。
○間食を積極的に摂りましょう。
《間食として好ましいもの》
- 牛乳や卵で作られたもの(例:プリン、菓子パン、シュークリーム)→たんぱく質も同時に摂取できます!
- チョコレート(75g/枚:557kcal)(1個/170kcal)
- ビスケット(28g/3枚:146kcal)
- ヨーグルト(100g/90kcal)
- アイス(120g/270kcal)
南京都病院 栄養管理室