COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
1. COPDとは
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、以前は「肺気腫」や「慢性気管支炎」と呼ばれていた疾患を、ひとくくりにした病名です。タバコの煙などの有害物質を、長期にわたって吸入暴露することで、気管支や肺に慢性の炎症が起こり、やがて進行性の肺機能の低下(気流閉塞)を起こす病気と定義されています。COPDの主な原因はタバコであり、COPD患者の9割の方に喫煙歴があると報告されています。日本人のCOPDの有病率は8.6%、40歳以上の約530万人がCOPDに罹患していると推計されており、現在COPDと診断されている患者さん以外にも、多数の潜在的なCOPD患者さんが存在すると考えられています。
2. COPDの症状・経過
COPDの代表的な症状として、長引く咳・痰・息切れがあります。中年以降の喫煙者の方で、風邪をひいたわけでもないのに咳・痰が長引く、階段を昇ったり速いペースで歩くと息切れがでやすい、などという自覚症状があればCOPDが疑われます。COPDが中等度以上に進行すると、患者さんは息切れを避けるために運動量が低下し、そのために筋力が落ちてさらに息切れが悪化するという悪循環が生じます。また風邪などをきっかけに急激に症状が増悪すること(COPDの増悪)もあり、増悪を繰り返すことで体力や肺機能が急速に低下していく場合もあります。COPDの重症化に伴い、やせなどの栄養障害、骨格筋の機能障害、うつ症状、骨粗しょう症、心・血管障害などの全身性疾患を合併する場合もあります。したがって、病気が進行する以前の早い段階でCOPDを発見して、対策をたてていくことが重要になります。上記のような症状が当てはまる方は、早めに呼吸器科の外来を受診していただければと思います。
3. COPDの診断、治療
COPDを診断するためには、肺機能検査(肺活量・一秒量検査)で気流制限を確認することが必要ですが、同時にレントゲンやCT、呼気NO検査などで、肺癌、肺炎、肺結核、気管支喘息など、他の疾患を除外することも重要です。COPDと診断された方の治療としては、まずは原因となる喫煙をやめることが最重要です。そのうえで、それぞれの患者さんの重症度や症状に合わせて、お薬(気管支を拡げたり、痰を調整するお薬など)を使用したり、生活指導や呼吸リハビリテーション、感染予防のためのワクチン接種などを行っていきます。重症のCOPDで呼吸不全をきたした患者さんでは、酸素の持続的な吸入(在宅酸素療法)や呼吸を補助するマスクの使用(NPPV:非侵襲的陽圧換気療法)が必要となる場合もあります。