てんかん

はじめに

てんかんは、100人に一人程度のcommon diseaseです。発症年齢は乳幼児から高齢者と幅広くみられます。高齢化社会に伴い、脳血管障害、脳腫瘍、認知症などの背景をもった高齢発症てんかんが増加しており、近年小児科だけでなく、脳神経内科での診療の機会が増えている疾患です。てんかんの発症は乳幼児期から高齢期まで、全ての年代で見られますが、人口の高齢化に伴い、脳血管障害などが原因となる高齢者の発病が増えています。高齢者のてんかんは小児のてんかんより有病率が高く,日本人では久山町の研究より,65 歳以上の 1 %を超えることが知られています。高齢者におけるてんかんの発生率と有病率は,高齢者人口の多い国では,独居や認知症患者同士の介護状況など,現状まだ過小評価されている可能性もあるといわれています。

てんかんの定義

‘てんかん発作epileptic seizure’ とは大脳の神経細胞が過剰興奮することによって一過性、発作性に出現した症状をさす用語です。
‘てんかん epilepsy’ は、慢性の脳疾患で、‘てんかん発作’ を引き起こす持続性、反復性の疾患です。

原因

てんかんの原因はさまざまで、原因が分からないてんかんもあります。大きく分けて、脳に何らかの障害や傷があることによって起こる「症候性てんかん」、そしてさまざまな検査をしても異常が見つからない「特発性てんかん」があります。

症状

てんかん発作は大きく分けて、「全般発作」と「部分発作(焦点発作)」に分けられます。全般発作は発作のはじめから、脳全体で神経細胞が過剰興奮し、意識が最初からなくなるという特徴があります。部分発作は脳のある部分から始まる発作で、脳のどの部分から起こるのかによって、発作のはじめの症状が決まります。

検査

てんかんの診断には、全身状態や神経学的な診察とともに、なによりも正確な問診が必要です。また、脳波はてんかんの診断のために最も重要な検査で、脳の神経細胞が出すわずかな電流を記録することで脳の異常を診断します。MRI検査CT検査などの画像検査により器質的な異常の評価が行われます。

診断

てんかんの診断は、問診や上記検査により行います。特に、脳波検査はてんかんの診断において重要な役割を果たします。
発作が診察室で起こることは極めてまれですので、どのような発作であるのか、患者さん自身や付き添いの人、目撃した人の情報、証言から推測します。携帯でのビデオ撮影も極めて参考になります。

【てんかんと鑑別・区別が必要な疾患】

意識が突然なくなる、けいれんが起こる、または奇妙な動きが見られるといった症状は、必ずしもてんかんに特有のものではありません。これらの症状は、他の病気によっても引き起こされることがあります。そのため、以下の疾患との鑑別が必要です。
★心臓疾患による失神や立ちくらみ
★脳出血や脳梗塞
★低血糖
★不随意運動
★睡眠時の行動異常
これらの疾患はそれぞれ異なる治療法が必要となるため、正確な診断が重要です。どの疾患が原因であるかを見極めることで、最適な治療方針を決定することができます。

治療

てんかんのある人のうち70~80%は、薬や外科治療などにより発作を抑制(コントロール)できます。残りの20~30%の人は、現在使用できるどの薬や治療法を用いても発作が止まらない難治性てんかんです。
規則正しく内服することが大切です。また、しばらく発作が起きていないといって自己判断で中止・減量しないようにすることが何より大事です。
薬剤療法で発作が抑制されない場合、手術の可能性を検討します(手術が可能な施設への紹介をします)。

当院での取り組み

当科は、通常の脳神経内科外来だけでなく、「てんかん外来」(初診)でも患者さんの診療に取り組んでいます。「てんかん外来」の受診には、かかりつけ医からの紹介が原則として必要です。

社会生活

学校生活や仕事を続ける上で、安全を確保しながらも、できるだけ制限を少なくし、適応しやすくする工夫が大切です。

  • 学校生活や就業: 安全を守りつつ、できる限り制限を減らし、快適に過ごせるよう工夫しましょう。
  • 運転免許: 発作の抑制状況と法律の規定に基づいて、運転免許の取得や更新を考慮する必要があります。
  • 妊娠・出産・授乳: これらは計画的に行うことが重要です。医師と相談しながら適切な計画を立てましょう。

これらの工夫によって、安全かつ充実した社会生活を送ることができます。

日常生活での注意点

  • 規則正しい生活を
    規則正しい生活を続けることがとても大切です。睡眠不足や過労は発作を引き起こす原因になります。睡眠時間が同じでも、生活リズムが乱れると睡眠の質が低下し、服薬のタイミングがずれて発作が起きやすくなります。毎日同じ時間に起きて寝るようにし、日中に適度な運動をしましょう。
  • 危険を避ける
    日常生活の中で「ここで倒れたら危ないな」と思う場所を確認し、転落や溺水の危険を避けるようにしましょう。ホームの端や駅の階段、浴槽、プールなどが考えられます。特に入浴中の事故は危険ですので、浴槽に入るときは必ず誰かと一緒に入る、周りに危険物を置かない、シャワー中は座る、などの配慮が必要です。
  • 飲酒は控える
    アルコールは多量摂取で発作の原因になるので、控えめにしましょう。また、アルコールは肝臓に負担をかけ、抗てんかん薬の副作用が出やすくなります。
  • 旅行について
    意識を失う発作の心配がある場合は、一人旅は避けましょう。睡眠不足や過労を避け、余裕を持ったスケジュールを立ててください。旅行先で受診できる病院を探しておく、予備の薬を持っていくなどの準備も重要です。海外旅行の際は、英文の紹介状を用意しておくと安心です。飛行機に乗るときは、機内で発作が起きた場合の対応マニュアルを作成しておくと良いでしょう。

以上が、てんかんについての基本的な情報です。
患者さん向けに日本てんかん協会のウェブサイトが参考になります。

てんかんについて | 公益社団法人 日本てんかん協会 (jea-net.jp)

また、具体的な症状や治療法については、医療専門家にご相談ください。

①京都大学病院てんかん診療支援センターと連携して診療にあたっています。

②患者さんおよび医師の皆様に役立つ資料は以下のURLより御利用下さい。
http://epilepsy.med.kyoto-u.ac.jp/supportcenter_j/information