パーキンソン症候群

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進行性核上性麻痺

大脳皮質基底核変性症

多系統萎縮症

レビー小体型認知症

進行性核上性麻痺

概要と症状

進行性核上性麻痺(Progressive Supranuclear Palsy:PSP)は、「核上性の眼球運動麻痺が進行性に現れる」ことを病名の由来とし、以下のような症状を特徴とする神経変性疾患です。

  1. 1.
    転倒で発症することが多く、姿勢を保持できずバランスを崩す、足がすくむ、歩いている時に加速する、といった症状によって転倒しやすくなります。
  2. 2.
    上下方向の眼球運動障害が平均3年目に出現し、その後、水平方向も障害されます。
  3. 3.
    パーキンソン症状:筋強剛(筋緊張の高まり)は、左右対称性で頚部・体幹に強い傾向があります。姿勢は直立しがちで、進行すると頚部が後屈します。また、目が開けにくくなり、瞬きが少なくなります。パーキンソン病の治療薬であるレボドパは効きにくいことが多く、症状はパーキンソン病より早く進行します。
  4. 4.
    前頭葉の働きが落ちるため、危険に対する注意力・判断力がおちるとともに抑制が効かなくなり、転倒リスクを生じます。認知症を伴う患者は進行が早い傾向があります。

検査

脳MRIでは、中脳被蓋が萎縮する際に生ずるハミングバード・サイン(はちどりの口ばし)が特徴的です。RI(核医学)検査も診断に重要で、DATスキャンでは線条体での集積低下がみられますが、パーキンソン病で異常を示すMIBG心筋シンチグラフィは正常で、脳血流シンチグラフィでは前頭葉での集積が低下します。

病型

古典的に報告されているリチャードソン症候群、認知症を伴う前頭側頭認知症型などは、進行が比較的速く認知症も伴うため、合併症が出やすい傾向があります。一方で、パーキンソン症状で始まって病初期にはレボドパが効くパーキンソン病型、すくみ症状以外の症状がない期間が続く純粋無動型では、比較的進行が緩やかで、合併症がでにくく、認知症も進みにくいとされています。

治療

治療は対症療法で、ドパミン補充療法が一部の患者で効果を認める場合があります。症状に応じて、排尿障害・便秘の治療薬、認知症薬・抗うつ薬を用いることもあります。転倒予防や誤嚥予防のため、理学療法や言語療法によるリハビリテーションを行います。

大脳皮質基底核変性症

概要と症状、特徴

大脳皮質基底核変性症(Corticobasal degeneration: CBD)では、大脳皮質と大脳基底核の両方で神経細胞が変性し、病理学的には進行性核上性麻痺共通の特徴(異常凝集タウ蛋白の神経・グリアへの蓄積)をもつ疾患です。大脳皮質症状としては、失行(麻痺がないのに日常動作がうまくできない)、皮質性感覚障害(掌に書かれた数字がわからない)、把握反応(つかんだものを離せない)、他人の手徴候(自分の意思に反して手が勝手に動き、他人の手のように感ずる)、ミオクローヌス(すばやい不随意運動)があり、パーキンソン症状としては、無動・筋強剛・ジストニア(筋の緊張による異常な姿勢・運動)が挙げられます。その結果として、症状のある上下肢・体幹の筋緊張が異常に強くなり、徐々に動きにくくなります。動きにくさには左右差がみられ、一見、脳卒中による片麻痺のように見えることもあります。治療や患者サポートは進行性核上性麻痺に準じます。

検査

脳MRIでは、障害されている側の大脳萎縮が特徴的です。RI検査も診断に重要で、DATスキャンでは線条体での集積低下がみられますが、パーキンソン病で異常を示すMIBG心筋シンチグラフィは正常で、脳血流シンチグラフィでは障害されている側で有意に前頭葉や頭頂葉での集積が低下します。

多系統萎縮症

概要

多系統萎縮症(Multiple System Atrophy:MSA)は、中年期以降に発症する弧発性の神経変性疾患で、小脳症状、パーキンソニズム、自律神経症状を特徴とします。従来は、小脳症状主体のオリーブ橋小脳変性症(OPCA)、パーキンソニズム主体の線条体黒質変性症(SND)、自律神経症状主体のシャイ・ドレイガー症候群の3疾患に、別々に分類されていました。しかし、これら3疾患に共通の病理学的特徴(グリア細胞内のαシヌクレイン凝集・蓄積)があることがわかり、2003年より指定難病の分類が本疾患に統一されました。

症状

  1. 1.
    小脳性運動失調::歩行時に体幹がゆれて両足を左右に広げる(歩行失調)・手足の不自由さ(四肢失調)、ろれつの回りにくさ、飲み込みにくさが挙げられます。
  2. 2.
    パーキンソニズム::体幹優位に筋強剛、動作緩慢、首下がり、発症早期からの転倒、細かく不規則な震え、発語障害や嚥下障害を生じます。
  3. 3.
    自律神経症状(起立性低血圧、発汗異常、排尿障害、性機能不全、便秘):起立性低血圧は倦怠感、立ちくらみを生じて、ひどくなると眼前暗黒感や失神が起こり、回数増えると臥床の原因になります。夜間尿、排尿困難による尿失禁・尿閉も生活の質を低下させます。

診断

尿失禁(尿意切迫、頻尿、残尿)、起立性低血圧(収縮期で30mmHg以上・拡張期で15 mmHg以上)、性機能不全(男性)の少なくともいずれか一つの自律神経症状が必須で、それに加えて、レボドパが効かないパーキンソン症状(パーキンソン型:MSA-P)、又は、小脳症状(小脳型:MSA-C)の出現も必須です。

検査

脳MRIでは、パーキンソン型で被殻のスリット状低信号、小脳型で小脳・脳幹のやせ、脳幹の十字サインを認めます。パーキンソン型ではDATスキャン集積低下がみられ、小脳型では脳血流シンチグラフィで小脳の集積低下を認めます。

治療

パーキンソニズムに対して、レボドパやドパミンアゴニストが効く場合があります。小脳性運動失調に対して静注(プロチレリン)、経口剤(タルチレリン)を使用します。起立性低血圧には、昇圧剤投与や弾性ストッキングの着用、排尿障害には、α阻害薬やコリン作動薬の投与を行います。。転倒予防や誤嚥予防のため、理学療法や言語療法によるリハビリテーションを行います。転倒による骨折、肺炎や尿路感染症、起立性低血圧による失神、声帯外転麻痺によるかすれ声、睡眠時無呼吸症候群を生じた場合には、今後の治療方針について、担当の医療従事者と早めに相談しておく必要があります。

レビー小体型認知症

概要

レビー小体型認知症(Dementia with Lewy body:DLB)では、パーキンソン症状が出現する1年後よりも以前から、幻覚・妄想、認知機能障害や意識レベルの変動を生じます。
脳MRIでは大脳萎縮、MIBG心筋シンチグラフィでは心臓の自律神経での集積低下が見られ、脳波は徐派化します。脳の病理変化(αシヌクレインの神経細胞での蓄積)はパーキンソン病と共通し、治療もパーキンソン病に準じますが、パーキンソン病に比べてレボドパが効きにくい傾向があります。認知機能障害、幻覚・妄想に対しては抗認知症薬、抗精神病薬や漢方薬を用います。

→詳細は、「アルツハイマー病、その他の認知症」をご参照ください。