アルツハイマー病四方山話-9
(この記事は「重松神経内科医長」に院内報のために14回にわけて掲載させていただきましたものに若干の加筆訂正してまとめたものです)
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第9話
[前回までのあらすじ:アルツハイマー病の真犯人は軸索流障害?アミロイド斑と神経原線維変化を上手く結びつけることができそうです。]
アルツハイマー病の治療が可能になるのは西暦2016年です:さあ皆さんは間に合いますか?僕自身は心細い感じ。実はこれは、科学技術庁の予測です。ちなみにコンピューターが将棋の名人に勝てるようになるのがその2年前の2014年、掃除洗濯ロボットが家庭で活躍するようになるのが、逆に2年後、2018年だそうです。
治療は大きく分けると、原因を取り除く[予防]と、起こってしまった障害を治す修復、つまり狭い意味での[治療]の2つに分けて考えることが出来ます。
予防は、なんと言っても原因を知ることが大切です。例えば、今までに紹介した容疑者、遺伝子異常、アルミニウム、炎症、それに外傷の4つですが、もしそれらが犯人であれば、それを捕まえることがそのまま予防になります。つまり、遺伝子異常を予防したり、アルミニウムを除いたり、炎症を抑えたり、外傷を避けたりする事になります。既にお話ししたように、アルミニウムと炎症に関しては実際に治療の試みが始まっています。遺伝子異常に関しては、まだ実験段階あるいは仮説段階なのですが、幾つかの試みがあります。例えば、APPを上手に分解する酵素の導入や、アミロイドに成り得るAPPの断片の無害化などです。
従って、趣味を持ったり頭を使うことなどは、残念ながらアルツハイマー病の予防にはなりません。趣味がないことがアルツハイマー病の原因ではないからです。大数学者やお稽古のお師匠さんも、のんびり昼寝をしていても皆一緒と言うわけです。でも隠居したり入院したりで惚けるって言いますよね。実際時々経験します。しかし、隠居も、入院も、寝たきりもアルツハイマー病の原因とは考えられていません。ですから少なくとも現時点では、廃用症候群ともきちんと区別することが大切です。
次回はアルツハイマー病になってからの治療のお話。